講座の主旨
2015年に都市農業振興基本法が施行され、都市農地の位置づけが「宅地化すべきもの」から都市に「あるべきもの」へと転換しました。これを受けて都市政策においても2017年の都市緑地法の改正により、農地も緑地として都市政策に組み込まれ、都市農地の保全が進められるとともに、都市での「農ある暮らし」のニーズがますます高まっています。
そこで日野市でも、農業振興と緑地を含めた都市農地保全の取り組みや、農業経営の実情、市民の農への参画、地産地消の推進、持続可能で循環型の社会づくり、歴史などを学ぶ連続10回の講座を2024年11月から開催しています。
(主催:農あるまちづくり講座 in 日野市実行委員会、共催:都市農業研究会、一般社団法人TUKURU、労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団 東京三多摩山梨事業本部、協力:日本社会連帯機構、農的社会デザイン研究所、日野市、後援:JA東京みなみ)
第7回講座
今回の講座では、まず都市農地活用センターの小谷俊哉さんが「市民による農地活用」と題して、全国で広がる市民による多様な農地活用の背景や事例をお話しくださいました。次に、日野市職員で都市計画課所属時代に「農のある暮らしづくり計画」の策定に携わった氏家健太郎さんが、日野市での取組みについてお話くださいました。
講座の内容や様子は、JA東京みなみが初回分からホームページにアップ下さっています。こちらからご覧下さい。



私が印象に残ったこと
地域交流、食育、多世代交流、多文化共生、農福連携、防災協力、地域内循環、生物多様性保全、温暖化対策などなど農地の可能性は本当に大きいものだと、講師のおふたりのお話を聞いてあらためて感じました。それは人間が一方的に自然に働きかけるのではなく、さまざまな生きものから人間もはたらきかけられる、いわば多様な生命が絡まりあう場が農地のベースにあるからなのだろうと思います。だからこそ、そんな農地を残していきたい・・・。
日野市では2022年に東平山ハチドリ農園、2023年に多摩平の地区センターのうちたすガーデンがスタートし、そして現在は南平の新しい市民農園がオープンにむけて準備中。さまざまなタイプのコミュニティ農園が広がり、私も楽しく遊ばせてもらっています。
その一方で、農地の宅地化はどんどん進んでいます。氏家さんが「15年も前から循環型農法を続けて、しかも多くの人が集うコミュニティ農園は他にはない!」と絶賛された「せせらぎ農園」も、ついに今年、相続の問題から存続が危ぶまれています。
いったい、どうすれば良いのでしょう?
質疑応答タイムで、講座に参加されている農家さんが「農地は法的な縛りの多いのに、こんな活動が広がっているなんて革新的だ!」と話されていました。それを受けて氏家さんは「『農のある暮らしづくり計画』を作っているとき、多くの農家さんともお話をさせていただいた。その際、農家さんにしてみれば、大切にしている自分の農地に不特定多数の人が足を踏み入れるなんて、病原菌を持ち込まれるかも知れないし、考えられないことだと思っていると知った。そしてまた農家さんには、市民による農地の保全が広がっていることも知っていただいた」という体験を話して、「大切なのは、農家さんと市民とが対話を重ねて、お互いに理解を深めることだと思う」と強調されていました。
この講座も、そうした対話の場のひとつとなっています。そして、講座が終わったあとでも、私たちは「農的活動」を楽しみながら、出会った農家さんとお話させてもらう。そんなことから、次の展開が見えてくるのかも知れません。
(小牧)